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2020.07.31 

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賃借人が亡くなった場合の保証人の責任

 建物や土地を借りている人が亡くなった場合、それぞれの借りる権利、すなわち借家権、借地権も相続されます。
 賃貸借契約を締結すると、借主は建物や土地を利用、使用することができます。その一方で貸主に契約で定められた賃料を支払う義務を負います。従いまして、相続が発生した場合、借主の相続人が賃借権を相続し、賃料支払い義務を引き継ぐこととなります。

 では、保証人の責任はどうなるでしょうか。このことについては、今年令和2年4月1日から始まった新しい法律(民法)の前と後で分けて考える必要があります。
 まず、今までは借主が亡くなっても当然に保証人の責任が無くなるものではなく、新しい相続人の月々の賃料支払い義務を保証し続け、相続人による賃料未払いがあればその未払い分を支払う責任があります。
 ここで注意を要するのが、令和2年4月1日を経過したら、もはやそうでは無くなるのではなく、4月1日以降、保証契約自体を新法の下で改定しているなどの事情が無い限り、従前の上記考え方が4月1日以後も適用される、ということです。法改正があるとき、よくこのような適用の仕方がされます。

 次に4月1日以降に借家、借地について保証契約を締結、改定した場合、従前よりも保証人の責任の範囲が限定され、比較的軽くなります。新しい民法のもとで借家、借地の保証契約を締結あるいは改定する場合、貸主と保証人との間で契約書にて、あらかじめ保証責任の限度額を明記することが必要となりました。この保証人の責任限度額のことを「極度額(きょくどがく)」と言ったりします。保証契約書中に、具体的に「極度額 金○○万円」などと記載する必要があり、この記載が無い場合、保証契約自体が無効となります。
 そして、この新しい保証契約制度の下では、借主が亡くなり相続が発生した場合、まず賃借権自体は相続人に引き継がれることは今までと同様ですが、保証人の負う責任は亡くなった借主の未払い分のうち、極度額の範囲内に限定されることとなります。すると、極度額を超える未払い賃料があった場合でも、保証人は極度額の金額分まで支払えばよいこととなります。また、借主の相続発生により支払うべき金額が確定しますので、相続人に新たに発生した賃料未払い債務分の責任を負わなくとも良いこととなります。
 保証人の極度額を限度とする責任の内容について、借家人の賃料未払い債務以外に、原状回復義務など他の債務も負担するものであるかについては、様々な見解が出されていますが、今後、裁判例などの蓄積により一定の方向性が出てくると思います。

 新しい法律は、保証人の責任が重くなり過ぎないようにするために改正されたものです。将来、借主に相続が発生した場合、貸主、保証人がそれぞれどのような立場になるかを検討した上で、今現在の契約書がどのような記載になっているかを見直し点検されても良いかと思います。
                                德丸修一
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