相続手続きのためにお客様の戸籍を拝見させて頂く中で、あまり多くないのですが、戸籍の記録上、死亡日が「令和2年〇月〇日」ではなく、例えば「令和2年4月1日から同年4月5日頃までの間」というようなこともあります。文字通り亡くなられた日時の特定が難しいことを理由とするのですが、この場合、相続開始日はそのまま「令和2年4月1日から同年4月5日頃までの間」となります。不動産の相続登記手続きにおいても、基本的に、このような戸籍の記載通りに登記記録されることとなります。
もし、亡くなられた日時の記載が以上のようなものであった場合に、その相続人の一人が4月2日あるいは3日に亡くなっていたとしたら、相続関係はどのようなことになるでしょうか。
相続は基本的に死亡によって発生しますので、先に亡くなられた方から後に亡くなられた相続人へ順次、発生していきます。ところが、先ほどの場合だとお互いに相続の順番が不明なので、誰から誰に相続が生じているのか、特定できません。そこで、法律(民法)が特別に規定を設けて、「同時に死亡したものと推定」することとし、お互いに相続が発生しないものとしました。
例えば、父母、子2名の家族関係の場合、父と子一人の死亡の先後関係が不明ですと、父とその子との間に相続が発生せず、父の相続人は母と他の子のみ、亡くなった子の相続人は、母のみとなります。
もっとも、この規定はあくまで同時死亡と推定するに止めていますので、裁判制度を利用して異なる反論をすることは可能です。
戸籍からお客様の相続関係を追っかけていくにあたって、森ばかりを見て木を見ず、あるいは木ばかりを見て森を見ない、ということがないよう気を付けたいところです。
德丸修一