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2020.08.28 

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意思能力と遺言

 自筆証書遺言の保管制度が始まっています。法務局では、持参した遺言の自署や押印の有無など、一定の形式が整っていることをチェックされた後、無事に保管されることになります。
 法務局の遺言書保管官によるチェックは遺言内容まで及ぶものではなく、また、遺言書作成時の状況まで確認するものではありません。ですので、一時的に酩酊状態であったりご病気などにより、判断能力が十分でない状態で作成された遺言書については、たとえきっちりと形式を整えて法務局に保管しているものであったとしても、遺言書作成時の判断能力が不十分であることを理由に無効とされる可能性はあります。遺言者自身はいつでも遺言を撤回できますのであまり気にするところではないかもしれませんが、遺言内容に利害関係を持つ人がその遺言内容の有効性を争う場合などには、一つの争点となってきます。
 一般に法律的な効力が発生するような行為をする場合、その行為の意味や、その行為を行ったらどうなるかを判断するための一定程度の判断能力を要します。この能力を「意思能力」と言います。昔の民法には意思能力に関する明文の規定は無かったのですが、最近の改正により、「意思能力」を有しない法律行為は無効とする規定が設けられています。この規定に基づいて、例えば裁判などで実は無効な遺言であった、となりますと、遺言の内容通りにはならず、法定相続分に従った相続が発生することになります。
 遺言当時の状況を記録しておく義務などはありませんが、後日の紛争に備え、ビデオカメラによる遺言作成時の記録などを残しておくことも一理あろうかと思います。もっとも、その記録映像を逆手にとられ、意思能力無効を主張されることもあり得ると思いますので、必ずしも万全とも言い切れず、悩ましいところではあります。
                                     徳丸修一
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