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2020.11.20 

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特定遺贈と包括遺贈

 遺言によって、ある財産を特定の人に贈与することを「遺贈」と言います。当事者双方の合意に基づく「贈与契約」とは異なり、遺言者のみで成立させることができます。そして、遺言者の死亡によって効力が発生します。
 遺贈の方法には、特定の財産を贈与する「特定遺贈」という方法と、「私の財産の全てをAさんに遺贈します。」「私の財産のうち半分をAさんに遺贈します。」というような、「包括遺贈」と言われている方法があります。実際には遺言書の書きぶりによって、どちらの遺贈に当てはまるのか、判断が難しいケースもあったりします。そのような場合には遺言の文言から形式的に考えるだけでなく、遺言者の置かれた状況や真意をできるだけ探求してその遺贈の性質を見定めることになります。そういう意味で解釈の余地が出てくることもあります。

 特定遺贈の場合、個別の財産が譲り受ける人(受遺者)へ移転する形になります。一方、包括遺贈である場合、受遺者は「相続人と同一の権利義務を有する。」と規定されていることから、あたかも相続による権利及び義務の移転が発生するような形になる点で、両者は大きく法律構成を異にしています。
 包括遺贈ですと、相続と同様、権利のみならず、債務等の義務も引き継がれることになります。割合で包括遺贈を受けた場合も、その割合に応じた義務を引き継ぎます。
 そこで、包括遺贈を受けることを放棄しようとする場合、相続の場合と同様、自己が包括受遺者であることを知ってから3か月以内に、家庭裁判所へ放棄の手続きを要することとなります。3か月を経過しますと包括遺贈を承認したものとみなされてしまいます。特定遺贈の場合は遺言者の死亡後、いつでも家庭裁判所の手続きを要せず放棄できることと異なっています。
 また、「私の財産のうち半分をAさんに遺贈します。」というように、割合で包括遺贈が発生した場合、残り半分の権利義務割合については相続人が承継していますので、次に包括受遺者と相続人の話し合いによって遺産を分配する必要、つまりは遺産分割協議をする必要が出てきます。

 遺贈の方法が特定的であるか包括的であるかにより、その後の権利関係及び相続手続きが大きく異なってきます。遺言書作成の際の参考にして頂けましたら幸いです。
                                      徳丸修一
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