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2020.11.27 

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相続させる旨の遺言

 遺言書の基本的な書き方の中で、「私の財産○○をAに相続させる。」というような書き方があります。一般に「相続させる旨の遺言」、「特定財産承継遺言」と言った呼ばれ方をしている記載方法です。
 「相続させる旨の遺言」は、Aさんが法律上の相続人であれば相続によって財産関係が移転することになりますが、相続人ではない知人等の第三者である場合には、遺言による贈与、すなわち「遺贈」という形で特定財産が移転する法律構成になります。遺言書の書き方にかかわらず、当事者の属性によって法律上の移転方法が異なっています。この違いは、例えば不動産登記手続きの申請方法、登録免許税などの場面で、具体的な違いとなって表れてきます。
 
 特に不動産に関する「相続させる旨の遺言」の場合、先に不動産登記を備えたものがその所有権を第三者に主張することができる、ということに注意しなければなりません。先に誰よりも早く遺贈、又は相続による所有権移転登記を備えていないと、権利を手放さざるを得ないことも生じかねません。ちなみに、相続人に対する「相続させる旨の遺言」の場合、その相続人の法定相続分を超える部分についてのみ、上記対抗問題が発生し、その法定相続分に限っては登記なくして自己の所有権等の権利を第三者に主張できますが、それは第三者との共有状態を招いていますので、少なくともその相続人にとっては望ましくない状況になっていると思います。
 例えば、相続人Aさんが今回のような遺言書に従って土地建物を相続することになっていたにも拘わらず、他の相続人Bさんの債権者(第三者)がBさんの権利を使ってAB名義の相続登記を完了させた上で、代物弁済などの理由に基づいてBさんの共有持分を債権者(第三者)へ移転登記した場合、Aさんよりも債権者(第三者)の共有持分権(所有権)の主張が優先してしまい、結果、当該土地建物はAさんと債権者(第三者)の共有状態になるおそれも想定されます。

 遺言に基づく相続手続きをする場合、いろいろな所に書類を提出したりするなどして、どうしても手間と時間が掛かってしまいますが、それに加え、先に早く手続きをしないと遺言書のとおりに財産が引き継げない、といったことも起こり得ます。「遺言書があるから、いつ手続きをしても大丈夫だ。」という考えは誤りですので、ご注意いただけましたらと思います。
                                      徳丸修一
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