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2021.01.08 

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相続が起きたら直ぐに家を出て行かないといけない?(配偶者短期居住権)

 一緒に住んでいる配偶者に相続が発生した場合、その住んでいる建物が亡くなられた配偶者所有のものですと、遺言書の定めや共同相続人同士の遺産分割協議によって決められた者に所有権は移っていきます。居住している配偶者の方が建物を引き継ぐのであれば、建物所有者としてずっと住み続けることができますが、そうならない場合も、もちろんあり得ます。
 建物の所有者が、居住している配偶者以外の者となってしまった場合、理屈だけから言えば、配偶者の方は住み続ける根拠を失って退去しなければならないように思えます。しかしそれは余りにも酷な話です。また他方で新たに建物所有者となった者の利益にも配慮しなければなりません。
 そこで民法は、居住する配偶者に、一定期間だけですが、無償で住み続けることのできる権利を認めました。「配偶者短期居住権」と呼ばれています。配偶者の方は、相続が発生し他の者が建物所有者となった場合でもすぐに出て行く必要はありません。もっとも、法律上の婚姻関係の無い事実上のパートナーの方には、残念ながら認められていません。
 ちなみに配偶者の方が相続放棄をした場合でもこの権利は発生しています。
 注意を要するのは、この配偶者短期居住権は、「短期」とある通り、ずっと末永く住み続けることまでも認めるものではありません。ずっと住み続けられる「配偶者居住権」とは別の権利です。
 配偶者短期居住権の存続期間は、①当該配偶者を含む共同相続人がいる場合には、遺産分割協議が成立した日または相続開始日から6か月を経過した日の、いずれか遅い日までとなります。最低でも6か月は住み続けることができます。また、遺産分割協議が整わない場合にはずっとその間住み続けることができることとなりますが、家庭裁判所を利用した遺産分割の調停や審判などによって、配偶者の方が予想していた時よりも早く遺産分割が終結することも考えられ、調停成立や審判確定日から6か月経過により、配偶者短期居住権は消滅することとなります。
 ②また、遺言に基づく場合や、配偶者の相続放棄後に遺産分割協議が行われた場合には、建物所有者となった者が、配偶者短期居住権の消滅の申し入れをした日から6か月を経過する日までが存続期間となります。

 配偶者短期居住権は、急に生活の基盤を失わせる虞ある相続に対処するため、令和2年4月1日以降に発生した相続に関して認められるようになったものです。この権利は一時的に居住できる権利に留まるため、退去すべき時までに次の住まいを探したり、あるいは新たに建物所有者と建物利用のための契約を結ぶなど、次の対応を取る必要がありますが、当面の住まい確保には役立つ権利と言えるでしょう。
                                       徳丸修一
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