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2021.01.22 

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遺産分割の錯誤取消し

 相続人が遺産分割協議を行った後、実は被相続人におよそ返済できる見込みのない、多額の債務があることが判明した場合、相続人はもはや相続放棄をして債務を免れることができなくなっているのでしょうか。
 相続放棄は、自己が相続人であることを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申述を行う方法によるわけですが、相続財産を処分したりするなどの行為を行っていた場合、相続を承認したものとして扱われ、原則的に相続放棄をすることができないこととなります。ここで、遺産分割協議成立の事実は、自己が相続人であることを前提とした行為であったため、相続を承認したものとして扱われます。この点は、遺産の一部について分割協議が成立した場合も同様と考えられます。
 そうしますと、遺産分割を行った相続人は、もはや相続放棄をすることができず、後に判明した多額の債務も相続していることになってしまいます。
 このような場合、相続人としては、多額の債務の存在について、知っていればおよそ遺産分割などせず、相続放棄をしていたであろうことを理由とし、遺産分割の錯誤取消しを主張することが考えられます。錯誤による取消しを行うことによって、遺産分割承認前の状態となり、相続債務の存在を知って3か月内に家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う、という流れになります。一応、理屈上はそのようになります。
 もっとも、遺産分割協議書は、債務を含めた一切の相続財産を確認した後に行われることを前提とし、各相続人が実印を用いて記名押印を施した書面であり、この効力を取り消すことは決して容易ではありません。場合によっては、弁護士の先生に手伝ってもらいながら説得力のある証拠を集めていかなければなりません。

 錯誤取消しは容易に認められない現状からしますと、被相続人にどのような資産、そして債務があるか、状況を確認することが非常に大事と言えます。家庭裁判所への、相続放棄の申述期間伸長制度なども利用し、できるだけ正確な現状把握に努めたいところです。
                                         徳丸修一
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