不動産や預貯金などを遺言書に記載したり、遺産分割協議書に記載しようとする場合、出来るだけ正確に記載していた方が良いです。遺言書や遺産分割協議書の内容は、その文字のみを形式に捉えるのではなく、作成の経緯や趣旨、作成者の意図などの事情などに基づいて合理的に解釈して確定していくべきではありますが、実際の相続手続きの現場では記載の不明瞭・不明確を理由に手続きがなかなか進められない場面に遭遇することもあります。それでは生前にせっかく作成していた遺言書が手続きに利用できなかったり、改めて遺産分割協議書を作成し直さざるを得ないこととなってしまいます。
土地や建物などの不動産を記載しようとする場合、基本的には法務局で管理している不動産登記簿謄本(全部事項証明書)の内容通りに記載するようにします。例えば以下のように書きます。
(1)土地 所 在 ○○市○○町〇丁目
地 番 〇番〇
地 目 宅地
地 積 ○○.○○㎡
(2)建物 所 在 〇〇市○○町〇丁目〇番地〇
家屋番号 ○○番
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 ○○.○○㎡
2階 ○○.○○㎡
遺産分割協議書であればパソコンなどで作成し、プリントアウトしたものを使用しても良いです。自筆証書遺言の場合ですと、昔はこの記載も手書きを要し大変でしたが、最近の法改正により、パソコンで作成したり、法務局発行の不動産登記簿謄本をそのまま遺言書に綴じる方法も認められるようになりました。もっとも自筆証書遺言書の場合、財産の記載部分のみが手書きでなくともよくなり、相続させるなどの記載部分は従前同様、手書きである必要があります。また、手書きではない記載ページには遺言者の手書きによる氏名、押印が必要であることにも注意が必要です。
不動産の中には、未登記の建物などもあります。登記されていないとは言え、被相続人、遺言者の所有である場合には当然遺産となる点では登記されている不動産と違いはありません。未登記の不動産を遺言書や遺産分割協議書に記載しようとする場合は、上記不動産登記簿謄本を参考にすることはできませんので、客観的に不動産を表示している他の資料として、固定資産税納税通知書の記載などを参考にします。未登記物件などと書き添えたりもしています。
相続対象の不動産を法務局で調べることはそれなりに時間とコストがかかりますが、今後の相続手続きをスムーズに進めるためには是非とも行っておきたいところです。また、法務局で管理している「公図」という図面も取得し、隣接地や私道など、相続物件に漏れがないかどうかも確認した方が安心だと思われます。
徳丸修一