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2021.05.07 

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権利証が発行されない

 不動産の購入や相続などによって新たにその土地や建物の所有者となった人は、その不動産を管轄する法務局へ所有権移転したことの登記申請を行い、所有権登記名義人を自己のものとします。不動産の登記記録上、新たに名義人になった申請人には「登記識別情報通知」が発行されます。これは、昔でいうところの「権利証」にあたります。とても大事な書類です。この「登記識別情報通知」は、各登記記録上の名義人欄ごとに、固有のシリアルナンバーのような記号が割り当てることで、権利証と同じ働きをしています。不動産登記法が改正され、登記識別情報通知の制度が開始されて以降の名義変更にはこの「登記識別情報通知」が発行されます。昔の契約書などに朱印を押された権利証については、無効になるのではなく、有効です。各不動産取引においてそのまま利用できます。
 登記識別情報(権利証)は、不動産登記記録上、原則として新たに名義人となった登記申請人に発行されます。従いまして、新たな登記名義人となったが、登記申請していない方には登記識別情報が発行されないこととなります。司法書士などに登記申請を依頼した場合には、依頼人に登記識別情報通知(権利証)が発行されますが、代理人を利用せずに登記名義人になった人には発行されません。例えば、共同相続人の一人から、相続人全員名義の相続登記をした場合の申請人以外の相続人や、売掛債権を有している債権者が、代位という形で債務者名義とする不動産登記をした場合の当該債務者などの場合です。また、自ら登記申請人となった場合でも、登記申請の際、登記識別情報通知の発行を希望しない場合も発行されません。
 登記識別情報(権利証)が発行されない場合でも、登記名義人となっている以上、発行されている場合と同様、第三者に対して自己の所有権等の権利を主張することはできます。
 もっとも、登記識別情報の後日発行や、紛失した場合の再発行は現行制度上認められていません。ですので、例えば不動産を売却するケースでは、登記識別情報(権利証)のない状態で手続きを進めることとなります。この場合、問題なく取引を進めることは可能ですが、登記識別情報(権利証)の添付提出に代わる方法を用いて登記申請を行う必要が出てきます。その分、司法書士の報酬等、取引手数料がかかることもあります点、ご容赦いただけましたらと存します。
                                     徳丸修一
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