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2021.06.11 

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相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)

 遺言書を作成しようとする場合、「私は、私の有するすべての財産を、子○○に相続させる。」という表現を使用することがあります。一般に「相続させる旨の遺言」と言われています。民法上では「特定財産承継遺言」と呼ぶようになりました。
 この相続させる旨の遺言は、性質上、遺言者による遺産分割方法の指定の一種であると解されています。遺言書によって分割方法があらかじめ決められていますので、別途相続人らによる遺産分割協議を要せず、相続発生により直ちにその相続させる旨の内容に従った権利変動が生じます。もし、相続させる旨の遺言内容が、特定の相続人に、その者の法定相続分を超える相続分を取得させるものである場合、それは、その遺言書により、遺産分割方法の指定に加え、法定相続分とは異なる相続分の指定も行っていると考えられています。
 また、相続させる旨は、ある特定の動産、不動産でも良いですし、先の例のように「すべての財産」という一括した表現方法を用いることも可能です。
 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)による遺産の移転は、法定相続人に対するものである場合、文字通り相続と同様に移転します。しかしながら法定相続人以外の者が遺産を承継する場合、「相続させる」という文言が使用されていたとしても、遺贈と扱われてしまいます。この点は特に不動産の相続登記手続きで顕著な違いが生じます。法定相続人に対する相続させる場合には、当該相続人が単独で相続登記を申請することができ、その際の登録免許税は不動産評価額の1000分の4となります。正に相続登記そのものです。それに対し、法定相続人以外の者に対する遺贈と解される場合には、法定相続人(あるいは遺言執行者)と受遺者の共同で所有権移転登記をする必要があり、その際の登録免許税は不動産評価額の1000分の20となります。

 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)がある場合、旧法下では誰に対してもその内容を主張することが出来ましたが、新民法では法定相続分を超える部分については、先に登記等対抗要件を具備した者が優先して権利を主張することが出来るようになり、遺言で相続する人が必ずしも確実に権利を取得出来るとは限らないこととなりました。従いまして、相続させる旨の遺言書があるからと言って相続手続きを放置しておくことは避け、出来る限り早め早めに相続手続きを行うようにしましょう。
                                 徳丸修一
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