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2021.06.25 

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日本国籍を有する海外在住の方の相続手続き

 相続人の中には、長く日本を離れ、海外で生活されている方もいらっしゃいます。海外に住所を移しても、法定相続人の一人である場合、他の相続人と同様、遺産分割に参加し、その協議書にサインをします。日本の各市区町村役場で実印の印鑑登録をしていれば、遺産分割協議書に押印することができますが、住所を海外に移す手続きをしていると、印鑑証明書を取得することができません。印鑑制度を採用している国であればその証明書をその国から発行してもらえるでしょうが、ほとんどの国では印鑑制度を採用しておりません。
 そのような海外に在住している方の一般的な遺産分割協議書へのサイン方法の一つとしましては、海外の住所地を管轄する日本領事館において、領事館の面前で署名および拇印を押印し、署名・拇印証明書の付された協議書等を作成する、という方法があります。ちょうど署名・拇印証明書が日本の印鑑証明書の代わりをしているようなものとなります。
 実際に署名・拇印証明書を取得するには、事前に自信が何者であるかを証明するため、戸籍(の写し)やパスポートなど、身分を疎明する資料を用意する必要があります。また、遺産分割協議書などへの署名は領事館にて行うべきものですので、協議書などの書類については事前に氏名等を記入したものであってはなりません。手数料やその他、手続きの流れについては、各国の日本領事館がホームページで詳しく説明していますので、戸籍やいくらかの手数料が必要であること、証明書発行には数日かかることなども確認しておくことをお勧めします。私もご依頼いただきました時には関係する領事館のホームページを見て確認しています。
 また、相続手続きでは海外在住の方の住所・居所を証明する書類が必要な場合もあります。不動産の相続登記手続きで、海外在住の相続人がその不動産の名義人となる場合などです。このような場合、日本在住の方ですと住民票を取得すればよく、また印鑑証明書に住所地が記載されていますので、住民票の代わりに利用することも可能です。他方、海外在住の方の場合、日本と同様に住民票制度があるものではなく、国ごとに住所の証明の仕方は様々です。日本の相続手続きはあくまで日本法に基づきますので、海外在住の方に対しても、住民票と同程度の正確さを備えた住所を証する書面の提出が求められます。
 そこで、海外在住の方の住所証明として、上述の署名・拇印証明書と同様に、各国領事館にて在留証明書を取得する方法があります。在留証明の取得においてもパスポートが必要になりますし、公共料金の支払明細書などの生活の本拠を示す資料を準備する必要があります。この点は各国領事館のホームページを見て事前に確認しましょう。先の署名・拇印証明書は、あくまで協議書などに記載された署名記載や押印の事実を証明するものですので、日本の印鑑証明書とは異なり、必ずしも住所の証明とはならず、住所証明のためには在留証明を取得しておく必要があります。従いまして、相続手続きの場合、署名・拇印証明書と一緒に在留証明書を取得しておけば、その後の手続きを進めやすくなると思います。

 今回は海外に在住する日本国籍保有者について当てはまる話でした。日本国籍を離脱された方の日本における相続手続きに必要な相続証明、住所証明はこれらとは異なってきます。それぞれの場合に応じた証明書の取得手続きを履む必要がありますので、丁寧に確認するようにしましょう。
                                  徳丸修一
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