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2021.04.09 

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葬儀費用は誰が負担すべきか~預貯金の払い戻し~

 亡くなられた方の葬儀費用を誰が負担すべきかについて、法律で明確に決められているものではありませんが、ほぼ相続人の方々がお支払いになっていると思います。形としましては、相続発生後、相続人が葬儀会社と契約を結んでいますので、葬儀費用を支払うべき者は、葬儀会社と具体的に契約を交わした相続人の方となります。亡くなられた被相続人が直接の契約当事者となるものではありません。
 具体的に契約書に署名、押印した者が葬儀費用を支払うとしましても、その支払い原資をどうするのかについては、また別の問題となります。できれば、亡くなられた方の遺産の中から支払いに充てたいところです。
 相続人自身の手持ち資金から葬儀費用を工面することが難しい場合、遺産の中から費用を捻出することを考えることになりますが、遺産分割協議や必要書類への押印など、他の共同相続人の協力が得られないと手続きを進めることができず、払い戻しを受けることも難しいです。
 そこで、相続人には、ある一定額を限度として、遺産分割前に被相続人名義の預貯金を払い戻しを受けることが認められるようになりました。特に葬儀費用のためだけに、というわけではなく、当面の生活費などのためにも払い戻しを受けることができます。払い戻しを受けられる限度額は、一つの金融機関ごとの預貯金額の3分の1に、自己の法定相続分を掛けた金額です。もっとも令和3年現在、150万円を上限としています。
 例えば夫が死亡し、妻子2人の法定相続人がいる場合に、子の一人が遺産分割前に払い戻しを受けようとすると、○○銀行(全支店)の父名義口座300万円に対し、300万円×3分の1×法定相続分4分の1=25万円の払い戻しを受けることができることになります。この計算は金融機関ごとに行いますので、複数の金融機関に口座がある場合、払い戻し額が全体として150万円を超えることもあり得ると思います。

 この預貯金の前払い制度を利用した場合、遺産一部の分割協議が整ったとみなされることになります。実際に協議が行われる前であっても、法律の規定により、協議が整ったという扱いになります。ということは、この払い戻し制度を利用した相続人について、相続の単純承認があったとし、今後、相続放棄などができなくなるという恐れもあります。この点は注意を要すると思います。
                                        徳丸修一
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