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2021.05.21 

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特定遺贈か包括遺贈か

 遺言によって自己の相続財産などを譲り渡す方法を遺贈と言います。ある特定の財産を遺贈する場合を特定遺贈と言います。それに対し、債務も含めた相続財産一切を遺贈する方法を包括遺贈と言います。更に、包括遺贈には、一切の権利義務を同一人に移転させる方法と、複数人に対し、それぞれ例えば2分の1ずつなど、割合をもって遺贈する方法があります。この方法は、一般に「割合的包括遺贈」と言われています。
 特定遺贈と包括遺贈は、ともに遺言による財産移転の点で共通しますが、特定遺贈はどちらかというと贈与に近く、包括遺贈は相続に近い構造をしています。例えば遺贈を放棄しようとする場合、包括遺贈では相続放棄の規定が準用され、家庭裁判所への放棄の申述を要します。また、特定遺贈は、遺言書で指定された具体的な財産のみを移転させますが、包括遺贈では財産と債務すべてが移転することとなります。
 特定遺贈であるのか、あるいは包括遺贈であるのかについては以上のような大きな違いがありますので、遺言書の記載上、特定遺贈なのか、包括遺贈なのか、明確にしておくことが大事です。包括遺贈であれば「包括して遺贈する。」と明記しておいた方が良いです。
 そして、同一の遺言において、特定遺贈と包括遺贈が併存することも、一応認められています。もっとも、学説上の争いはあるようです。例えば、ある特定の財産のみをAさんに遺贈し、他の権利義務一切をBさんに包括して遺贈する、というような内容です。遺言書に明確に記載されていれば、Aさんについては死因贈与に近い考え方で、Bさんについては相続に近い考え方で手続きを進めることができます。ところが、遺言書の記載上、果たしてこれが特定遺贈なのか、包括遺贈なのか、もしくは両方が併存した遺贈なのか、判別が難しいものもあります。
 遺贈の方法が遺言書の記載上判別難しい場合、原則に立ち返り、遺言者がどのような意思に基づいて遺言に記載したかを探索します。しかし、特に相続人、受遺者同士の利害が衝突する場合、その作業すら困難を極めます。このような場合には裁判所を利用して、どのような遺言内容に基づくものであるかを確定しなければなりません。

 公証人の先生に起案してもらう公正証書遺言の場合ですと、遺言内容が明確に記載されていますので、法務局や金融機関での相続手続きに支障を来すことはほぼありません。ご自身で作成される自筆証書遺言の場合には、あとあと紛争の火種にならないよう、どの財産、債務を、誰に、どのように譲渡するか、曖昧にせず明確に記載するようにしましょう。
                                     徳丸修一
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