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2021.09.03 

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抵当権と根抵当権

 不動産に関する相続手続きをしている場合、その土地や建物に抵当権や根抵当権が設定されていることがあります。法務局で取得できる不動産の登記事項証明書には、被相続人の氏名のほか、その不動産を担保として提供し、その提供方法として抵当権・根抵当権が記載されたりしています。
 抵当権は、債権者が債務者に対して有する債権、例えば金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求権などを担保するために不動産に設定されるものです。不動産を担保提供することで住宅ローンなどの融資を受け易くなります。抵当権は、不動産の所有者と債権者による抵当権の設定契約を締結することで成立します。債務者と不動産の所有者が異なる場合ですと、他人の債務に対して、自己の不動産を担保提供するような構図になります。抵当権を設定した不動産所有者は従前通り土地建物を使用収益できますが、債務の返済が滞った場合には、その不動産が競売に掛けられ、競売代金が返済に充てられることとなってしまい、不動産を失ってしまう危険性もあります。
 抵当権は上記のように貸金債権など特定の債権を直接担保するために設定されるものです。これに対し、根抵当権は、不動産を利用して債権を担保するという、担保権としての基本的な考え方は同様ですが、担保の仕方が大きく異なります。
 根抵当権は、ある特定の債権を直接的に担保するのではなく、債権者と不動産所有者との間で根抵当権設定契約を結ぶことにより、その契約内容に従って一定の範囲の債権を担保する融資枠を設定します。例えば1000万円の融資枠を設ける根抵当権設定契約を結ぶと、1000万円の範囲内で債権者と債務者が返済や再融資が繰り返され、取引関係が継続していくこととなります。
 根抵当権の、この融資枠のことを「極度額」と表現しています。この極度額の範囲内に収まっている限り、返済や再融資の都度、根抵当権の抹消や再設定をする必要はなく、金融機関などと長期的な取引関係を継続できる点に特徴があります。抵当権ですと、全額返済により抵当権は消滅しますので、再融資を受ける際には新たに抵当権を設定し直す必要があります。根抵当権は、発生消滅を繰り返す各債権を包括的にカバーしていますので、よく金融機関と事業者との間で利用されています。

 相続が発生したときには不動産の所有権欄のみならず、担保の記載部分も変更等の登記手続きをする必要が生じたりします。中には担保権の相続による変更登記を省略できる場合もありますが、いずれにしましても不動産の相続手続きを行なおうとする場合には、法務局で不動産の登記事項証明書を取得し、きちんと確認をするようにしましょう。  徳丸修一
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