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2021.11.07 

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遺言と遺留分

 遺言書を作成し、ある特定の人に相続財産を相続させよう、あるいは遺贈しようとする場合、他の子など、法律で認められた相続人の遺留分に注意しておく必要があります。遺留分が侵害されたと主張する相続人(遺留分権利者)は、相続財産を承継した者に対し、侵害された分の金銭を支払うよう請求することができます。この遺留分に関する権利は、遺言によっても排除、否定できるものではありませんので、遺言書の記載に関わらず、遺留分権利者はその権利を行使することが可能です。
 なお、兄弟姉妹が相続人である場合には、その兄弟姉妹には遺留分が制度上認められておりません。遺留分権利者は配偶者や子、子がいない場合には父や母などの直系尊属に当たる者が遺留分権利者となります。
 すると、遺言書を作成する際、遺留分を差し引いた相続財産を遺言の対象としておくべきか、ということが気になるところです。この点については、もし遺留分相当の財産について遺言の対象から外していると、その財産は遺言の範囲に入らないものとして法定相続や遺産分割協議の対象となってしまい、別途相続人らによる話し合いが必要になったりしてきます。従いまして、遺留分権利者にも配慮した遺言書を作成しようとする場合には、遺言者が引き継がせたいと思っている人のほかに、遺留分権利者である相続人には○○を相続させる、というような、遺留分相当の財産を引き渡す旨の遺言事項を記載しておいた方が良いと考えられます。
 遺留分権利者の取得分に触れていない遺言書である場合、相続人や遺言執行者はその内容通りに不動産や預貯金口座の相続手続きを進めることとなります。その過程において遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行った場合、基本的には金銭の支払いをもって応じなければなりませんが、遺留分侵害額請求をせずに約1年経過した場合、遺留分に関する権利は消滅し、結果的に遺言書の記載のとおりの相続手続きが完了することとなります。その意味で遺留分に関する権利を行使するかどうかは、各遺留分権利者の任意と言えます。

 遺言はその人の最終意思を示すものとして最大限尊重されるべきとは言うものの、制度上は遺留分権利者の権利利益の方が優先されています。その意味では遺言書も万能というものではありません。もし、権利行使をしそうな遺留分権利者がいる場合、その方も含めた遺言書の作成を検討されても良いかもしれません。   徳丸修一
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