遺言書作成の一つの方法として、公正証書遺言というものがあります。これは、遺言者が公証人の面前にて遺言書の内容に間違いないことを表明して作成される遺言書です。
司法書士は、遺言者が公証人役場へ出向く前に、あらかじめ遺言内容の打ち合わせを行い、場合によっては戸籍などを用意した上で、遺言者と公証人の間を繋ぐ役目を果たします。
遺言の内容に不動産が含まれている場合には、固定資産税の納税通知書や不動産登記簿謄本なども用意します。納税通知書は、遺言書作成費用の算定などに用います。実際に遺言者が公証人に会う前に、これらの資料を公証人に提供し、案文を作成してもらいます。
遺言書の案文が出来ると、遺言者の方にも内容を確認してもらい、それで良ければ公証人と面談する日程調整に入ります。遺言者が公証人役場に出向くこともできますし、日当がかかりますが、公証人の先生に来てもらうことも可能です。
もし、話を聞くよりも、筆談の方が良いということでしたら、公証人と筆談による面談も可能です。筆談を利用する場合、それはそれで法律上の作成根拠が別にありますので、事前に筆談のやり取りを希望する旨を公証人に伝えておく必要があります。面談当日、急遽筆談に切り替えることはできず、別日に改めて面談することになります。
面談当日、ご実印と、公証人の遺言書作成費用をご持参下さい。公証人の先生と一緒に遺言内容を確認した後、押印し、費用を支払います。費用は事前に教えてくれます。
また、面談の際、受遺者などの利害関係人以外の証人2人が同席し、立ち合うことを要します。これは、司法書士や司法書士事務所事務員が証人になることも可能です。遺言者と公証人のやり取りが適法であることをチェックする役割を果たします。そして2人の証人も立ち合いの証として、遺言書に署名押印しています。
証人立ち合いの下、遺言書へ署名押印、費用の支払いを済ませますと、無事、面談は終了です。公正証書遺言書は、同じ内容のものが3通作成されます。1通は「原本」として公証人役場に保管されます。そして残る2通が「正本」、「謄本」として遺言者に渡されます。「正本」の方は再発行できない唯一の文書ですが、「謄本」の方は再発行が可能です。「正本」「謄本」は大事にご自身で保管しておいても良いですし、信用できる者、例えば遺言執行者としてお願いしている方などに預けておいても良いと思います。また、司法書士事務所で保管させて頂くこともあります。
公正証書遺言書は、偽造される恐れが極めて低く、かつ証拠価値がとても高い文書となります。自筆の遺言書よりもコストはかかりますが、その分、安心できる遺言書作成方法であると思います。
徳丸修一