遺言書を自ら手書きして作成したものを自筆証書遺言と言います。作成後、誤記を訂正・削除したり、不足箇所を追加しようとする場合、法律の定めにより、一定の方法によるべきこととされています。そもそも訂正者は遺言者自身でなければならず、遺言者が亡くなった後に相続人らによって訂正等を行なうことはできません。
また、遺言書の訂正は、あくまでも遺言書の記載上の訂正にすぎず、遺言内容を撤回するものとは一応区別されますが、訂正内容によっては一見判別が難しい場合もあると思います。ほぼ遺言内容自体の変更を伴うような場合には、ここにいう訂正等の方法によるのではなく、新たに遺言書を作成し直した方が良いように思われます。
自筆証書遺言書の訂正方法は、以下の方法を全て満たす必要があります。
1.遺言者によって訂正等の箇所を指摘し、訂正等変更した旨の記載があること
2.訂正等変更した旨の記載とともに訂正者である遺言者の署名があること
3.訂正・削除すべき箇所に二重線等を施し、あるいは加入箇所に加入を施し、その変更の場所に押印すること
以上の訂正方法は、自筆部分以外の財産目録部分にも当てはまります。
遺言書の訂正方法を誤ると、訂正等の効果が認められないこととなります。基本的には訂正前の記載のままであることになってしまいますので、遺言書に基づいた相続手続きを行うことが非常に困難になることが想定されます。また、誤った方法による訂正を施したことで、遺言全体の有効性にも疑義が生じる危険性も考えられます。
遺言者の最終の意思が表明された遺言書は、その作成方法、そしてその訂正等の方法も厳密に法律で定められています。もし、訂正等の必要が生じた場合、可能な限りもう一度作成し直した方が遺言書無効のリスクを幾らか抑えることができるだろう、と思われます。 徳丸修一