相続人が不動産の相続登記手続きをする場合、原則として亡くなられた方(被相続人)名義の不動産権利証を必要としません。紛失などしていても相続登記を申請できます。もっとも、相続人による真正な相続登記申請であることを証明するため、追加資料として被相続人名義の権利証を法務局へ提出することがあります。
不動産登記簿上、権利者は住所と氏名(会社などであれば本店場所と商号)で記録されます。住所か氏名が異なれば、それは別人扱いになります。もし、被相続人の登記記録上の住所が、亡くなった時の住所と異なれば別人扱いになってしまいます。そこで、登記記録上の住所から死亡時の住所までの連続を示し、同一人であることを証明するため、住民票や戸籍の附票を法務局に提出するなどしています。氏名についても同様の考え方が当てはまります。
ところが、亡くなられた方の住民票(除票)などには保存期間があり、既に市区町村役場では廃棄していることもありますし、戦時中に火災で焼失していることもあります。このような場合、住所移転の経緯などを公的証明書によって証明することが事実上不可能になっています。そこで、他の方法として、権利証の現物を法務局に提出する方法により、間違いなく登記簿上の人物に関する相続登記手続きであることを担保することにしているわけです。
相続手続きのご相談を承りますときに、不動産の権利証を確認させて頂くこともあります。それは、司法書士が本人確認の一資料として参考にさせて頂くことの他に、実際の相続登記手続きの提出書類として使用することがあるためであったりします。ご相談の際にはご了承頂けましたらと存じます。
徳丸修一