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2021.02.19 

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相続分の譲渡

 相続人は、それぞれの立場によって各相続分を有しています。配偶者と子2人であれば配偶者は2分の1、子は各自4分の1の相続分を有しています。相続分とは、判例の言い方を引用しますと、「積極財産と消極財産とを包含した遺産全体に対する」、「割合的な持分」のことを言います。現預金や不動産などの積極財産のほか、債務である消極財産も含めた各相続人の地位ということになります。
 この相続分は遺産分割前であれば譲渡することができます。相続分の譲渡を行うと、その譲り渡し人は相続関係から離脱することとなります。しかし、相続債務については当然に免れることはできないとされています。債務の承継の仕方には譲り渡し人が債務を負わなくとも良くなる免責的な債務引受と、譲受人と譲渡し人がともに債務者となる重畳的な債務引受とがありますが、債権者の了解なく相続分の譲渡により債務を免れることになると、債権者の利益を害する虞がありますので、基本的には相続分の譲渡をした者、譲り受けた者双方が連帯して債務を負うとされています。従いまして譲渡し人が債務を免れようとするには、債権者の承諾を得る必要が出てきます。譲渡によって、譲受人が相続債務を引き継ぐことの了解を得る必要があるわけです。
 ちなみに、相続分の他の共同相続人への放棄、というものもありますが、債務については、上記相続分の譲渡と同様の考え方となり、債権者の承諾が得られなければ、相続債務を引き受けたままの状態が続きます。
 相続分は、相続人以外の第三者に譲渡できますし、他の共同相続人に譲渡することもできるとされています。第三者に譲渡した場合、その第三者は相続人の地位を引き継いでいるわけですから、他の共同相続人と同様、遺産分割協議に参加すべき者となります。もし、見ず知らずの第三者が遺産分割協議に参加することを避けたいのであれば、他の共同相続人は、相続分の譲渡があった日から1か月以内に当該相続分の取戻しを行うことができます。取戻しの際、費用と相続分の取戻し時点における相続分の価額を支払う必要があります。
 他の共同相続人に相続分の譲渡をした場合には、譲り受けた相続人の相続持分がその分増加することとなります。

 相続分の譲渡は、相続関係から離脱する方法の一つとされています。相続人がとても多い場合などに活用されていると思います。もっとも、先に見ましたように、当然に相続債務を免れるものではありません。また、とくに第三者に対する譲渡においては譲受人の贈与税や、譲渡し人の有償対価に対する譲渡所得税のことも検討しなければなりません。相続分の譲渡を行おうとする場合は、税理士や弁護士、司法書士などを交え、遺産分割協議など他の方法によることができないか等をチェックし、その上で行った方が良いと思います。
                                    徳丸修一
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