相続人の間でどの遺産を誰にどれだけ分配するか、遺産分割協議を行った場合、その協議の結果を遺産分割協議書という形にまとめます。この遺産分割協議書には、相続人の皆様によって間違いなく内容通りの話し合いが成立したことを証明するため、各個人のご実印を押印します。
遺産分割協議は、被相続人の財産状態が判明したのち行われることが原則ですが、実際には協議が成立した後に遺産が判明したりすることもあります。実は他府県に不動産を有している、他行に預金口座などを有していることが後になって分かった、というような場合です。
このような場合に備え、遺産分割協議の方法としては大きく2つの方法があろうかと思います。
一つは、のちに判明した財産については、未だ遺産分割協議は行われていないので、改めて判明した財産等について、遺産分割協議を行う方法です。このような場合、先に成立した遺産分割協議書には、後日遺産が判明した場合については改めて協議する、といった条項を入れたり、そもそも後日判明分については協議書に記載しない、といった仕上がりになっています。
もう一つの方法は、先に成立させて遺産分割協議書に、「その後判明した遺産については、長男○○に取得させる。」などと記載し、予め不測の事態に対応した条項を入れておく方法です。
後者の方法による場合、ある程度の予測になりますが、安心できる協議内容と言えます。具体的事情にもよりますが、不動産登記手続きも「一応」可能です。(大事なことなので2回言いますが、あくまで「一応」です。登記手続きに利用できないこともあり得ます。)
もっとも、具体的な遺産目録に基づかないこととなるため、100パーセント安心とまでは言えません。例えば、相続人同士においても「その後判明した遺産」には含められないということを理由に協議のやり直しを求められたり、具体的な預金口座の記載がないということを理由に、なかなか手続きに応じてくれない金融機関もあり得るところです。後に判明した遺産が多額に上るほどこの方法による分割手続きは難しくなると思います。
遺産分割協議書を作成しようとする場合、まずは出来る限りどのような相続財産があるのかを調査し、協議書の方には具体的な資産を列挙する方法を原則とした上で、なお、念のために上記のような条項を入れておく、という作成方法が良いと思います。
徳丸修一