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2021.08.27 

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農地の相続、山林の相続

 相続財産である不動産には、宅地や建物のほか、田や畑の農地もあれば、山林であることもあります。もちろん、農地や山林も他の相続財産と同様、遺言書や遺産分割協議書、あるいは法律上の相続順に従って相続されることとなります。その相続された結果に基づいて、管轄法務局にて農地や山林の相続登記を行います。
 農地の権利移転や利用権の設定には、一般的に農業委員会による農地法所定の許可手続きが必要です。この農地法の許可は権利移転等の効力要件ですので、許可がないと効力が発生しないという強力なものです。ですが、相続による権利移転の場合、被相続人の権利義務はまとめて包括的に相続人へ移転し、被相続人の地位を相続人らが引き継ぐように考えられていますので、農地法所定の許可手続きは不要とされています。このことは遺産分割による権利移転の場合にも同様で、遺産分割協議の結果に基づき、相続開始時より農地を引き継いだことになるため、農地法の許可は不要とされています。
 また、遺言に基づく農地の移転については相続と同一の効力を生じる包括遺贈と個別の財産の移転方法である特定遺贈による場合が考えられます。これらの場合、相続と同様と言えるような権利移転であるかどうか、という観点から包括遺贈と相続人に対する特定遺贈について、農地法の許可手続きは不要とされています。これらに対し、相続人以外の第三者に対する特定遺贈については、第三者に対する農地の譲渡により近いということで、農地法の許可が必要であるとされています。

 ただ、農地の相続については、農業委員会による許可手続きが不要であるとしても、別途、相続等により農地所有者が代わった旨の農業委員会への届出は必要です。農業委員会が農地の正確で適正な管理を行うため、情報提供をする必要があります。この届出は、許可とは異なり所有権移転の有効要件ではないので、届出をせずとも移転の効力は発生していますが、「遅滞なく」(およそ権利取得を知って10か月以内)届出をすることを怠ると、10万円以下の過料が課せられますので注意が必要です。

 山林の相続については農地のような許可制度はなく、遺言書や遺産分割協議書等の内容に従って権利移転の効力が発生します。もっとも、山林の権利関係を正確に管理するため、原則として市区町村に「所有者届出書」を提出する必要があります。所有者となったときから90日以内、つまり相続があったときから90日以内に届出をする必要があり、届出を怠ると10万円以下の過料が課されます。

 農地や山林について事前の許可などは必要なくとも、それぞれに事後の手続きが残っていますので、忘れずに届出をするようにしましょう。  徳丸修一
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